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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1473号 判決 1949年2月08日

主文

原判決を破毀する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理由

被告人吉田爲次郎の上告趣意同被告人辯護人工藤精二の上告趣意及同被告人辯護人横田隼雄の上告趣意は末尾添附の通りである。

辯護人工藤精二の上告趣意第二點について。

原判決がその判示事実を、證人直江五郎(上告趣意書に直江太郎とあるのは誤記と認める。)に對する第一審裁判所の訊問調書を他の證據と不可分的に綜合して認定していること、及び右訊問調書は第一審裁判所が法廷外で右直江五郎を證人として訊問したときの訊問調書であって第一審裁判所の公判調書でないことは所論の通りである。

そこで記録を精査すると、原審第一回公判調書には、裁判長が證據調をした書類として、第一審裁判所の各公判調書を掲げているけれども、右第一審裁判所が法廷外で訊問した右證人直江五郎に對する訊問調書は掲げていないし、原審各公判調書を通じて見ても、他に右訊問調書を被告人に讀聞かせ又はその要旨を告げてその意見辯解を聞いた事跡を発見することはできない。してみれば右訊問調書については原審公判廷では適法な證據調をしたものと認めるに由なく、かかる證據調をしない右訊問調書を犯罪事実認定の資料に供した原判決は採證の法則に反した違法あるもので右の違法は原判決に影響を及ぼすものといわなければならない。さすれば他の論旨、及他の辯護人並被告人の各上告趣意に對する判斷をするまでもなく原判決はこの點で破毀を免れない。

尚右は事実の確定に影響を及ぼすべき法令の違反であって、當裁判所自ら審判することを適當としないから、刑事訴訟法施行法第二條、舊刑事訴訟法第四四七條、第四四八條の二に從って主文の通り判決する。

以上は裁判官全員の一致した意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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